
ガラスの靴、かぼちゃの馬車、真夜中に解ける魔法。誰もが知る童話『シンデレラ』は、クラシック・バレエでも長く愛されている作品です。
華やかな舞踏会や美しいパ・ド・ドゥ、思わず笑ってしまう意地悪な姉妹の踊り。作曲家プロコフィエフの音楽が、ロマンティックで幻想的な世界を描き出します。
しかし、バレエ『シンデレラ』の魅力は、それだけではありません。
王子様と結ばれるおとぎ話として描かれることもあれば、映画スターを夢見る少女の物語になったり、亡き母への思いを胸に自らの運命を切り開く物語になったり。
同じ『シンデレラ』でも、振付家や演出家によって、その世界は驚くほど異なります。
この記事では、バレエ『シンデレラ』の原作や歴史、全3幕のあらすじ、プロコフィエフの音楽と見どころを解説。さらに、アシュトン版、ヌレエフ版、熊川哲也版、ウィールドン版など、それぞれの演出の特徴を紹介します。
2026年に新制作された谷桃子バレエ団の『シンデレラ』についても、実際の鑑賞を交えてお伝えします。
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バレエ『シンデレラ』とは?
バレエ『シンデレラ』は、世界中で親しまれている童話を題材にした全3幕の作品です。
現在、多くのバレエ団が上演しているのは、ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフによる音楽を使用した作品です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | シンデレラ(Cinderella) |
| 原作 | シャルル・ペローの童話など |
| 作曲 | セルゲイ・プロコフィエフ |
| 初演 | 1945年11月21日 |
| 初演場所 | モスクワ・ボリショイ劇場 |
| 初演振付 | ロスティスラフ・ザハーロフ |
| 構成 | 全3幕(演出によって異なる) |
1945年に初演されたプロコフィエフ版をもとに、その後さまざまな振付家が独自の『シンデレラ』を生み出しました。
なかでも有名なのが、英国ロイヤル・バレエ団のために制作されたフレデリック・アシュトン版です。
ほかにも、物語を1930年代のハリウッドに移したルドルフ・ヌレエフ版、豪華な舞台美術で幻想的な世界を描く熊川哲也版、グリム童話の要素を取り入れたクリストファー・ウィールドン版などがあります。
『シンデレラ』の原作とバレエの歴史
原作はペロー童話とグリム童話
シンデレラに似た物語は、世界各地で古くから語り継がれてきました。現在よく知られている『シンデレラ』には、大きく分けて2つの代表的な童話があります。
シャルル・ペロー版(1697年)
フランスの作家シャルル・ペローによる『サンドリヨン』。仙女が現れ、かぼちゃを馬車に変え、シンデレラに美しいドレスとガラスの靴を授ける物語です。現在のバレエでもおなじみの、魔法やガラスの靴といった要素は、このペロー版に由来しています。
グリム兄弟版(1812年初版)
ドイツのグリム兄弟が収集した童話『アシェンプテル』。こちらでは仙女の代わりに、亡き母の墓に育つ木や鳥たちがシンデレラを助けます。
魔法の木には母とのつながりが感じられ、ペロー版よりも自然や死生観が色濃く描かれています。
また、グリム版では靴はガラスではなく金色です。物語には、姉妹たちが足を靴に合わせようとする残酷な描写も登場します。
この2つの原作の違いは、後に登場するバレエの演出版を理解するうえでも重要なポイントです。
プロコフィエフの『シンデレラ』は1945年に初演
『シンデレラ』の音楽を作曲したのは、セルゲイ・プロコフィエフ(1891〜1953年)。バレエ『ロメオとジュリエット』でも知られる、20世紀を代表する作曲家の一人です。
『シンデレラ』の作曲は1940年に始まり、第二次世界大戦による中断を経て1944年に完成しました。
そして1945年11月21日、モスクワのボリショイ劇場で、ロスティスラフ・ザハーロフの振付によって初演されました。
その後、1948年にフレデリック・アシュトンが英国で独自の振付を発表。現在では多くのバレエ団が、プロコフィエフの音楽を使いながら、それぞれ異なる『シンデレラ』を上演しています。
なお、1945年はプロコフィエフ作曲のバレエ『シンデレラ』の初演年です。それ以前にも『シンデレラ』を題材とするバレエ作品は存在していました。
バレエ『シンデレラ』のあらすじ【全3幕】
ここでは、ペロー童話をもとにした伝統的なバレエ、特にアシュトン版に近い物語の流れを紹介します。演出版によって登場人物や出来事が異なるため、鑑賞する作品のあらすじと見比べてみてください。
第1幕|シンデレラの家と魔法の贈り物
シンデレラは、意地悪な継母や義理の姉妹たちに召使いのように扱われ、毎日家事をさせられています。
ある日、王宮で盛大な舞踏会が開かれることになりました。
姉妹たちは美しいドレスを用意して大はしゃぎ。しかし、シンデレラは舞踏会に連れて行ってもらえません。そんななか、貧しい身なりの老女が家を訪れます。
姉妹たちは冷たく追い払おうとしますが、心優しいシンデレラは老女にパンを差し出します。
実は、その老女こそ、シンデレラを助ける仙女だったのです。
姉妹たちが出かけたあと、仙女は本来の姿を現し、シンデレラに素敵な魔法をかけます。
春・夏・秋・冬を表す妖精たちが踊り、魔法の世界が広がります。
シンデレラは美しいドレスに身を包み、かぼちゃの馬車で舞踏会へ向かうことに。
ただし、魔法が使えるのは真夜中の12時まで。仙女は必ず時間までに戻るよう、シンデレラに約束させるのでした。
第2幕|華やかな舞踏会と王子との出会い
王宮では華やかな舞踏会が開かれています。王子の前には美しく着飾った女性たちが次々と現れますが、王子はなかなか心を動かされません。
そこへ、美しいドレスをまとったシンデレラが登場します。
その姿に、王子も舞踏会の人々も目を奪われます。王子とシンデレラは、踊りを通して少しずつ心を通わせていきます。
やがて二人だけのロマンティックなパ・ド・ドゥへ。
しかし、幸せな時間に夢中になっていたシンデレラは、真夜中の鐘の音に気づきます。
魔法が解けてしまう!
慌てて王宮を飛び出したシンデレラは、階段に片方の靴を残してしまいます。王子はその靴を手に、彼女を必ず見つけ出すことを誓うのでした。
第3幕|ガラスの靴が導く再会
シンデレラを忘れられない王子は、残された靴を手がかりに、彼女を探し始めます。
やがて王子はシンデレラの家へ。
姉妹たちは、何とか靴を履こうと大騒ぎします。しかし、どちらの足にも靴は合いません。
そのとき、シンデレラが持っていたもう片方の靴が見つかります。王子は、目の前の少女こそ舞踏会で出会った女性だと気づき、二人は再会を果たします。
仙女の祝福を受け、シンデレラと王子は幸せな未来へと歩み出すのでした。
プロコフィエフの音楽の魅力
バレエ『シンデレラ』を語るうえで欠かせないのが、セルゲイ・プロコフィエフの音楽です。
『ロメオとジュリエット』の情熱的でドラマティックな音楽に対して、『シンデレラ』では幻想的な美しさや軽やかなユーモアが際立ちます。
しかし、単に甘く美しいだけの音楽ではありません。不思議な響きや鋭いリズム、突然訪れる緊張感など、プロコフィエフらしい個性も随所に感じられます。
舞踏会を彩るワルツ
『シンデレラ』には美しいワルツが登場します。
華やかな宮殿の世界を描きながら、どこか夢を見ているような幻想的な旋律。特に舞踏会のワルツは、幸福感と同時に、魔法の時間が限られていることを予感させるような響きも持っています。
優雅な3拍子の音楽に身を任せながら、少しずつ変化する物語の空気にも注目してみてください。
緊張感が高まる「真夜中」
舞踏会の場面で印象的なのが、時計が12時を告げる音楽です。時を刻むようなリズムが現れ、華やかだった音楽は一転して緊張感に包まれます。
魔法が解けるまで、あとわずか。
シンデレラが慌てて逃げ出す場面を、音楽がドラマティックに盛り上げていきます。舞台の時計や照明、ダンサーの動きと音楽が一体となる、見逃せない場面です。

わぁ! 12時の鐘が鳴る場面、音楽までドキドキしちゃうね!



そうだね。時計が時を刻むようなリズムが、シンデレラの焦る気持ちや魔法が解ける緊張感を表現しているんだよ。



あの場面は、舞台の演出と音楽が一体になるところにも注目したいね!
幸福を描く終曲「アモローソ」
全曲の終わりを飾る「アモローソ(愛をこめて)」も美しい音楽です。
物語の終盤、二人の愛と幸福を包み込むように旋律が広がります。
華やかな舞踏会の音楽とは異なり、穏やかで温かみのある響きが印象的です。さまざまな試練を乗り越えたシンデレラの幸せを、音楽からも感じられるでしょう。
なお、バレエでは振付家によって使用する楽曲の順序や構成が変更されることがあります。
例えばアシュトン版では、第3幕の王子が各地を旅する音楽の一部が省略されています。同じプロコフィエフの音楽でも、演出によって聴こえ方や物語における役割が変わるのも、興味深いところです。
バレエ『シンデレラ』の見どころ
魔法によって変わる舞台と衣裳
『シンデレラ』といえば、なんといっても華やかな変身の場面。
質素な服装のシンデレラが美しいドレスに変わり、かぼちゃの馬車が現れます。舞台装置や照明、映像、衣裳の早替えなど、劇場ならではの仕掛けが見どころです。
バレエはダンサーの踊りが中心の舞台芸術ですが、『シンデレラ』では舞台美術そのものも物語の大切な要素となっています。
シンデレラと王子のパ・ド・ドゥ
バレエならではの魅力を存分に味わえるのが、シンデレラと王子によるパ・ド・ドゥです。
パ・ド・ドゥとは、二人のダンサーによる踊りのこと。王子がシンデレラを支えながら踊るリフトや回転、二人の息を合わせた美しい動きが、言葉を使わずに恋の始まりを表現します。
ただ技巧を披露するのではなく、二人がどのように心を通わせていくのかに注目すると、物語がより深く感じられるでしょう。
意地悪な姉妹たちのコミカルな踊り
ロマンティックな物語のなかで、ユーモアを添えるのが意地悪な姉妹たちです。
華やかなドレスを着て得意げに踊ったり、王子に気に入られようと張り切ったり。マイム(身振りによる演技)や、わざと不器用に見せる踊りが笑いを誘います。
演出版によっては男性ダンサーが姉妹を演じることもあり、優雅なクラシック・バレエとの対比が大きな魅力です。
振付家によって変わるバレエ『シンデレラ』の世界
ここからは、代表的な演出版を比較してみましょう。
同じ童話と音楽をもとにしていても、誰がシンデレラを助けるのか、王子との関係をどう描くのか、そして主人公の幸せをどう捉えるのかは、それぞれ異なります。
アシュトン版|優雅な英国バレエと、おとぎ話の魔法
初演:1948年/振付:フレデリック・アシュトン
英国ロイヤル・バレエ団を代表する古典作品のひとつ。英国バレエらしい優雅で繊細な踊りに、おとぎ話の華やかさとユーモアが組み合わされています。
アシュトン版の特徴は、仙女や四季の妖精たちが繰り広げる幻想的な踊り、意地悪な姉妹のコミカルな演技、そしてシンデレラと王子の美しいパ・ド・ドゥです。
1948年の初演では、振付家のアシュトン自身も義姉役を演じました。
この作品では、主人公の優しさが魔法によって報われ、幸せな結末へと導かれていきます。
英国ロイヤル・バレエ団の2023年新制作
英国ロイヤル・バレエ団では、2023年に舞台美術と衣裳を新たにした『シンデレラ』を発表しました。
振付はアシュトンのものを継承しながら、トム・パイによる舞台美術、アレクサンドラ・バーンによる衣裳が、幻想的な世界を彩ります。
植物や花をモチーフとした舞台空間、壮麗な宮殿、華やかな衣裳。
なかでも、プリンセスの姿となったシンデレラが階段を降りてくる場面は、おとぎ話の世界が目の前に現れたような美しさです。
新国立劇場バレエ団のアシュトン版
日本では、新国立劇場バレエ団が1999年からアシュトン版を上演しています。こちらの美術・衣裳はデヴィッド・ウォーカーが手がけており、英国ロイヤルの2023年新制作とは舞台の印象が異なります。
新国立劇場版でも、四季の妖精やかぼちゃの馬車、魔法が解ける瞬間など、アシュトン版ならではの魅力を楽しめます。
同じ振付を異なる美術・衣裳で上演することで、作品の世界観がどのように変わるのか。見比べてみるのも面白そうです。
ヌレエフ版|ハリウッドで夢をつかむシンデレラ
初演:1986年/振付:ルドルフ・ヌレエフ
パリ・オペラ座バレエ団のヌレエフ版は、従来のおとぎ話とは大きく異なります。
舞台は1930年代のハリウッド。
王宮の舞踏会ではなく、映画の世界を舞台にしたシンデレラの物語です。王子様は映画スターに、仙女は映画プロデューサーに置き換えられています。主人公は踊りの才能を持ちながら、家では不遇な生活を送っている少女。
映画プロデューサーに才能を見いだされ、スターへの道を歩み始めます。
映画好きのヌレエフらしく、作品にはチャーリー・チャップリンやフレッド・アステアなど、往年の映画へのオマージュも登場します。
シンデレラがチャップリンをまねた姿で踊ったり、コート掛けを相手に踊ったりする場面は、クラシック・バレエと映画の世界が交差するユニークな演出です。
衣裳を手がけたのは、ファッションデザイナーの森英恵。
この版の特徴は、シンデレラが王子様との恋だけでなく、自分の才能によって新しい人生を手に入れること。
物語の終わりには映画契約を結ぶ場面もあり、彼女自身の夢の実現が強調されています。
ヌレエフが伝統的な『シンデレラ』を20世紀の物語として再解釈した、興味深い作品です。



えっ! 王子様が映画スターになっちゃうの!?



そうなんだ。同じプロコフィエフの音楽でも、振付と演出が変わると、まったく違う世界が生まれるんだよ。



しかもシンデレラが自分の才能で夢をつかむなんて! いろいろな演出版を観たくなるよね。
熊川哲也版|心優しい少女を包む、華やかな魔法
初演:2012年/演出・振付:熊川哲也
K-BALLET TOKYOの『シンデレラ』は、熊川哲也による演出・振付作品です。
豪華な宮殿や衣裳、魔法による変身など、おとぎ話の世界を舞台いっぱいに描き出します。
この版で特に興味深いのは、四季の妖精に代わって登場する存在です。
花瓶のバラ、庭のトンボ、部屋のキャンドル、ティーカップ。
シンデレラが日常のなかで大切にしてきたものたちが、仙女の魔法によって妖精となり、踊り始めます。
これは単なる華やかな演出ではありません。
日頃から身近なものを慈しむシンデレラの優しさが、魔法となって彼女自身に返ってくるようにも感じられる構成です。
また、継母を男性ダンサーが演じるなど、喜劇的な要素も取り入れられています。
星々の輝く世界をかぼちゃの馬車で進む場面や、魔法が解ける瞬間の仕掛けなど、舞台でしか味わえないファンタジーも大きな見どころです。
ウィールドン版|亡き母の愛と、自分の運命を切り開く強さ
初演:2012年/振付:クリストファー・ウィールドン
オランダ国立バレエとサンフランシスコ・バレエの共同制作による『シンデレラ』。ウィールドン版では、ペロー童話だけでなく、グリム童話の要素も取り入れられています。
この作品で重要な役割を果たすのが、亡き母の墓から育つ魔法の木です。
シンデレラを助けるのは仙女ではなく、母の思いを感じさせる木や運命を司る存在たち。魔法の木が生きているかのように動き、シンデレラを美しく変身させる演出は、この版ならではの見どころです。
また、王子はギヨームという名前を持ち、友人ベンジャミンと入れ替わることで、シンデレラの本当の人柄を知っていきます。王子もまた、親に決められた結婚ではなく、自分の愛する人を選びたいと願う青年として描かれています。
シンデレラ自身も、ただ救いを待つだけの存在ではありません。悲しみを抱えながらも自分の意志で行動する、芯の強い女性として表現されています。
魔法の木や亡き母とのつながりを通して、愛や喪失、成長を描く作品です。
4つの演出版を比較すると?
| 演出版 | シンデレラを助ける存在 | 作品の特徴 |
|---|---|---|
| アシュトン版 | 仙女・四季の妖精 | 優しさが報われるおとぎ話 |
| ヌレエフ版 | 映画プロデューサー | 才能によって夢を実現する物語 |
| 熊川哲也版 | 仙女・身近なものの妖精 | 日常の優しさと幻想的な魔法 |
| ウィールドン版 | 魔法の木・運命を司る存在 | 亡き母の愛と、自立する主人公 |
こうして比較すると、『シンデレラ』という作品の奥深さが見えてきます。幸せは誰かから与えられるものなのか。それとも、自分で選び取り、つかんでいくものなのか。
振付家の解釈によって、シンデレラの姿は大きく変わっていますね。
谷桃子バレエ団の新制作『シンデレラ』(2026年)
2026年8月、谷桃子バレエ団は新制作の全幕バレエ『シンデレラ』を新国立劇場オペラパレスで上演しました。
この作品では、自然や虫たちが物語の重要な役割を担っています。幼いシンデレラは、母から小さな命を慈しむ心を教わって育ちます。
その後、両親を失い、深い孤独のなかに置かれた彼女を助けるのは、亡き母の面影を宿した大蝶々、父の記憶をまとったバッタ男爵、そして幼い頃から彼女を見守ってきた虫たちです。
仙女による魔法だけではなく、亡くした家族とのつながりや、自然のなかで育まれた優しさが作品の中心にあります。
谷桃子バレエ団の芸術監督・髙部尚子さんも、この新制作について、喪失を経験した少女が希望を持って未来へ進む成長の物語として紹介しています。
2026年8月・東京初演を鑑賞して
2026年8月9日、新国立劇場オペラパレスで上演された初日公演を鑑賞しました。
シンデレラ役は殿岡遥さん、王子役は千野円句さん。
特に印象に残っているのは、第1幕で虫たちが登場する場面の舞台セットです。
物語に登場する虫たちは個性豊かで、踊りもとても魅力的。自然や小さな命がシンデレラを支えるという作品の世界観を、舞台全体から感じられました。
衣裳の早替えによる変身も、舞台ならではの楽しさがあります。
そして、意地悪な姉妹たちのコミカルな踊り。男性ダンサーがポワントで踊る場面も、印象的でした。
第2幕では、シンデレラと王子が踊りを通して少しずつ心を通わせていく様子が美しく、二人のパ・ド・ドゥも素敵でした。
第3幕では、大きな階段のセットが登場します。
ダンサーたちが何度も階段を上り下りするため、転倒しないかと思わずハラハラしてしまいましたが、それも生の舞台を観ているからこその感覚だったのかもしれません。
華やかな美術や遊び心のある演出に加え、シンデレラ自身が愛情を受け取り、未来へと進んでいく姿が描かれた作品でした。
松葉杖での観劇|新国立劇場スタッフの温かな対応に感謝
実は今回の『シンデレラ』を鑑賞したとき、私は右足を骨折したばかりで、両松葉杖を使用していました。
公共交通機関での移動は想像以上に大変で、劇場に着くまでにもひと苦労。楽しみにしていた公演とはいえ、無事に観劇できるか少し不安もありました。
そこで、事前に劇場へ問い合わせ、松葉杖でも通常の客席で鑑賞できるか、どの入口から入ると移動しやすいかなどを相談していました。
当日は、入口近くのエレベーターへ案内していただき、スムーズに客席へ向かうことができました。
また、松葉杖をスタッフの方に預かっていただき、幕間にはお手洗いへ移動できるよう、わざわざ持ってきてくださいました。
一つひとつ丁寧に対応していただけたおかげで、移動の不安から解放され、安心して舞台を楽しむことができました。
会場スタッフの皆さまには、心から感謝しています。
骨折やけがなどで歩行に不安がある方へ
新国立劇場には、エレベーターやスロープなどのバリアフリー設備が整っています。ただし、通常席への移動や松葉杖の保管など、必要なサポートは状況によって異なります。
観劇を予定している方は、事前に劇場や公演主催者へ相談しておくと安心です。
私自身、あらかじめ問い合わせておいたことが、安心して観劇できた大きな理由の一つでした。
けがや身体の事情があっても、できるだけ安心して舞台芸術を楽しめること。今回の観劇では、そんな劇場の温かさも感じることができました。
新国立劇場|バリアフリー情報
新国立劇場|バリアフリールート・アクセス
バレエ『シンデレラ』をDVD・配信で楽しむ
『シンデレラ』は、演出によって物語の雰囲気が大きく変わる作品です。それぞれの振付や舞台美術を見比べるなら、DVD・Blu-rayやオンデマンド配信で鑑賞してみるのもおすすめです。
英国ロイヤル・バレエ団『シンデレラ』(アシュトン版)
2023年に新しい舞台美術と衣裳で上演されたアシュトン版です。
シンデレラ役はマリアネラ・ヌニェス、王子役はワディム・ムンタギロフ。華やかな宮殿や美しいパ・ド・ドゥなど、伝統的なおとぎ話の世界を楽しみたい方におすすめです。特典映像には日本語字幕が用意されていますよ。
パリ・オペラ座バレエ団『シンデレラ』(ヌレエフ版)
1930年代のハリウッドを舞台にしたヌレエフ版。
シンデレラを演じるアニエス・ルテステュと、映画スター役のジョゼ・マルティネズによる舞台がDVD化されています。チャップリンを思わせるコミカルな踊りや、映画の世界を舞台にした独創的な演出を楽しめます。
王道の『シンデレラ』とは一味違う作品を観てみたい方におすすめです。
※DVDは在庫が限られる場合があります。販売状況をご確認ください。
パリ・オペラ座バレエ「シンデレラ」全3幕
中古品掲載例:¥2,090
谷桃子バレエ団『シンデレラ』(2026年新制作)
2026年東京公演のアーカイブ配信
東京公演を見逃した方や、もう一度観たい方に向けて、8月の公演映像が期間限定で再販売されています。
アーカイブ視聴期間(2026年10月19日時点)
- 8月9日・10日公演:11月12日(木)23:59まで
- 8月11日昼・夜公演:10月20日(火)21:00から11月19日(木)23:59まで
購入日によって視聴期限が延長されるわけではないため、購入前に必ず公式案内をご確認ください。
※視聴期間や配信条件については、必ず公式サイトをご確認ください。
谷桃子バレエ団『シンデレラ』2026年大阪公演
2026年8月に東京で初演された新制作『シンデレラ』は、11月に大阪でも上演されます。
公演情報
- 日程:2026年11月21日(土)・22日(日)
- 会場:梅田芸術劇場 メインホール
- 上演:各日昼・夜の2公演、計4公演
詳しい配役やチケット情報は、谷桃子バレエ団の大阪公演公式ページをご確認ください。
谷桃子バレエ団の別の作品については、バレエ『リゼット』のあらすじ・見どころと演出版の違いでも紹介しています。
まとめ|演出の違いを知ると『シンデレラ』はもっと面白い
童話としてよく知られる『シンデレラ』ですが、バレエでは振付家や演出家によって、さまざまな世界が生まれています。
王子様との恋、家族への思い、夢を追いかける才能、そして自分自身の力で未来へ進む勇気。
同じ物語のなかに、それぞれの振付家が大切にしているものが映し出されているようです。
そして、どの演出版でも作品を支えているのが、プロコフィエフの豊かな音楽。
華やかな舞踏会やロマンティックなパ・ド・ドゥだけでなく、どんなシンデレラが描かれているのかにも注目してみると、新しい発見があるかもしれません。
一度観たことのある作品でも、違うバレエ団の『シンデレラ』を観てみたくなる。
そんな楽しさが、この作品にはあると思います。









