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観劇される前に、全体のあらずじや、背景情報を復習されたい方は続きをどうぞ!
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今回は、19世紀のフランスを舞台としたバレエ作品「椿姫」をご紹介していきます。個人的に大人のためのバレエ作品だと思っている「椿姫」。幻想的なものよりも、大人だからこそ染みる「人間描写」が好きな方に是非観ていただきたい作品。劇場に足を運ぶ際には、大きめのハンカチとティッシュは必須ですよ笑!それではいってみましょう!
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ねーねー。coyukiっち。今度バレエ「椿姫」観に行くんだって?どんな作品かとか、見どころって知ってる?
そうなの!今回は、人物描写が見どころの作品って聞いてたから、表情とか、細かい動作がみれるよう、1Fの良席を奮発したよ。でも作品の詳しいこと何も知らないから教えてほしいな!
もっちろん!全く知らずに観て、自分の感覚を味わうのもとっても素敵だけど、あらかじめストーリーを知っていた方が、世界観に没入できるし、ダンサーの表現をもっと深く受け取れると思うよ!
それじゃぁ、まずは、作品の歴史背景から深掘りしてみよう!
バレエ作品「椿姫」の歴史的背景
椿姫の原作はアレクサンドル・デュマ・フィスの小説「椿姫」
バレエ作品「椿姫」は、アレクサンドル・デュマ・フィスの小説「椿姫」(原題:La Dame aux Camélias)を基にしています。この小説は、1848年に発表され、彼自信も恋人関係であった高級娼婦(クルチザンヌ)マリー・デュプレシをモデルにした恋愛物語です。
19世紀のフランスは、政治的、社会的に大きな変革の時代でした。特に、1830年の七月革命や1848年のフランス革命の影響で、社会の価値観が変わりつつありました。この時代、女性が働くことへの偏見も多く、貧しく生き延びる手段として娼婦としての活動する人が多くいました。その中でも、貴族や王族に見出され、教養と物質的な援助を得て囲われ、自由で華やか、優雅な生活を送る高級娼婦=クルチザンヌとなることが裏社交界での憧れでした。
「椿姫」では、主人公マルグリットが高級娼婦であることを通じて、当時の社会における女性の苦悩や愛の形を描いています。
ジョン・ノイマイヤー振り付け、シュツットガルトバレエ団が初演
バレエ版「椿姫」は、1978年にジョン・ノイマイヤーによって振付けられ、ショパンの音楽を使用しています。ジョン・ノイマイヤーが振り付けに着手した背景については、公益財団法人日本舞台芸術振興会の記事を引用させていただきます。
ジョン・ノイマイヤー振付『椿姫』誕生のきっかけは、シュツットガルト・バレエ団の芸術監督に就任して間もないマリシア・ハイデが、ノイマイヤーに新作を依頼したことだった。
ノイマイヤーの振付は、感情豊かであり、登場人物の内面の葛藤や愛の深さを踊りを通じて表現しています。彼の振付は、技術的な美しさだけでなく、感情のリアリズムも追求するスタイル。ノイマイヤーは椿姫の物語を通じて、19世紀フランス当時の社会の矛盾や女性の苦境を描きたかったのだと思います。
デュマ・フィスもショパンも19世紀のフランスに生きた芸術家だからこそ、その時代の人物表現、世界観を色濃く表現できるんだろうね。
そのとおり!椿姫にもモデルがいて、デュマ・フェスの元恋人でもあったんだよ。時代背景と音楽を知ることで、ストーリーがもっと深く入ってくるよね!それじゃぁ、さっそくバレエ作品「椿姫」のストーリーを一緒に追ってみよう♪
バレエ作品「椿姫」のあらすじ・見どころ
椿姫は、プロローグ+3幕構成。美しく社交界の華である高級娼婦「マルグリット」と若く誠実なブルジョワ「アルマン」との切ない愛の物語を描いています。なぜ椿姫といわれるのかは、マルグリットが椿の花が好きだったから。さまざまな人物視点からの回想シーンを使ったストーリー構成が革新的で秀逸です。見どころはマルグリットの衣装の色に合わせて、紫・白・黒と言われているの3つのパ・ド・ドゥ。踊りを通して、マルグリットとアルマンの出会いの戸惑いと愛の喜び、狂おしいまでの情熱を心情豊かに表現しています。そして、椿姫と同年代に活動していたショパンの音楽との融合が観る人の心をより一層揺さぶります。
登場人物
- マルグリット・ゴーティエ
この物語の主人公。フランスの高級娼婦であり、結核を患っている。彼女の内面的な葛藤や愛の追求が物語の主軸となります - アルマン・デュヴァル
ブルジョワ青年。マルグリットに対して真剣に愛情を持ち、多くの貴族と関係を持っていた彼女の過去を受け入れようとします - マノン
劇中劇「マノン」の女主人公。バレエ作品「マノン」にて娼婦の役。椿姫の中で、マルグリットとの対比的な役割として登場 - デ・グリュー
劇中劇「マノン」の男主人公。バレエ作品「マノン」にてマノンを愛する紳士。椿姫の中で、アルマンとの対比的な役割として登場 - ジョルジュ・デュヴァル
アルマンの父。貴族としての誇りが強く、息子アルマンの恋愛に対して懐疑的 - プリュダンス
マルグリットの友人。彼女の苦悩や愛の状況を理解し、助けようとする存在。 - ガストン子爵
マルグリットの過去の愛人。彼との関係は、マルグリットが社交界での地位を維持するための一因 - オランプ
マルグリットの商売敵の若い娼婦。マルグリットに突き放されたアルマンが当てつけに親密になる娼婦 - ナニーヌ…マルグリットの召使
- 公爵 …マルグリットのパトロン
- N伯爵 …マルグリットの愛人志願
プロローグ:故人を想う競売シーンから回想へ
無音の中、場面はとあるアパルトマンでの競売のシーンではじまります。ソファには持ち主の肖像画が置かれています。ここはすでに故人となったマルグリットのアパルトマン。この物語を彩る代表的な音色とともに、何かを思い肖像画を眺めるアルマンの父。そこにアルマンが切迫した様子で飛び込んできます。愛する女性の死を知り、卒倒するアルマン。そして、思い出のドレスをみつけ、マルグリットとの出会いの回想へと誘われていきます。
1幕:アルマンの回想「出会い〜愛の告白」
1幕は、マルグリットとアルマンが出会い、心を通わせていくシーン。プロローグから続くアルマン視点での回想シーンです。これからの2人が直面する悩みや運命を暗示するような劇中劇「マノン」との対比、紫のパ・ド・ドゥでみえるマルグリットの心の変化に注目です。
場面はとある社交界。青年アルマンは思いを寄せていた社交界の華マルグリットに紹介されます。この日バレエ「マノン」を観劇している貴族達。マノンは、娼婦であるマノンとマノンを愛したデ・グリューの物語です。マルグリットは劇中のマノンを、生きるために多くの貴族と関係を持ち、満たされていたと思っていた過去の自分と重ね、同時に自分が本当の愛の喜びを知らないことに気づきます。一方のアルマンもデ・グリューと自分を重ねていました。まるでこれから起こることへの覚悟を試されるように・・。その夜、マルグリットの自宅に招かれたアルマンは、発作に苦しむ彼女を介抱し、愛を告白。誠実で素直に愛を注いでくれるアルマンにマルグリットも心を通わせていきます。
2幕:アルマンとアルマンの父の回想「愛の深まりと葛藤」
2幕は、束の間の白昼夢のように幸福感にみたされ愛を育む2人の様子、愛ゆえに戸惑い決断へと至るマルグリットの葛藤と、激しい焦燥感で打ちのめされるアルマンと2人の関係の変化が音楽とともに色濃く映し出される重要なシーン。アルマン視点での回想と、アルマンの父視点での後悔の回想が展開していきます。白のパ・ド・ドゥでみえる浮遊するような幸福感に包まれる2人の踊り、マノンを過去の自分として描写したマルグリットの葛藤の様子に注目です。
場面は田園にある別荘。アルマンとマルグリットの関係は急速に深まります。アルマンは彼女を真剣に愛し、彼女もパトロンである侯爵の庇護を捨て、アルマンに対して強い愛情を抱くようになります。そんなある日、アルマンの父が彼女を訪ね、アルマンとの関係を終わらせるよう迫ります。マルグリットは、自分の過去や病気の悪化により、自分の愛がアルマンを不幸にするのではないかと懸念し、自らの気持ちを犠牲にして別れを告げ、元の娼婦の生活に戻っていきます。
3幕:アルマンの回想・マルグリットの日記「別れと悲劇」
3幕はアルマンの回想、そして現在に戻りマルグリットからの日記でラストを結びます。再び再開し、疑念と葛藤が混じり合いながらも、狂おしいまでの情熱で、再び愛し合う2人の黒のパ・ド・ドゥ。そしてマルグリットを追い詰めるマノンの幻想から、ラストにかけて揺さぶられる感情を味ってください。
場面はパリの社交界、アルマンはマルグリットを追いかけ、再開する2人。情熱に突き動かされ再び結ばれるが、一度裏切られたと思い込んでいるアルマンと、自分を抑え病も悪化しているマルグリットの心はすれ違い、さらなる絶望が2人の最後の時となる。アルマンのマルグリットとの記憶はここで終わる。再び時は現実にもどり、死の悲しみに打ちひしがれる中、召使いナニーヌからマグリットの心情を綴った日記を受け取り、アルマンはすべての真実を知ることとなる。
くまぽーーーーん。涙がとまらないよーーーー
うぐぐぐぐぅぅ・・・
え”っ。私より泣いてる・・・
それにしても、音楽と踊り、場面描写が本当に自然で素晴らしかった。楽曲についても教えてほしいな。
もっちろん!音楽得意な僕が教えるね♪各場面で使われているショパンの曲を、それぞれのシーンで振り返ってみよう!曲を知ると、登場人物の感情がもっと深く入ってくると思うよ!それじゃ、いってみよー♪
バレエ「椿姫」におけるショパンの音楽
椿姫と同時代を生きたフレデリック・ショパンの音楽は、耳にすれば心の奥底から何かがふと湧き上がってくるように、感情表現において非常に豊かで、ロマンティックでありながらも美しく、時に悲しい旋律が特徴です。椿姫を振り付けたジョン・ノイマイヤーは、同時期に生き、ロマン派を代表するショパンの音楽が物語の感情をより強く引き立てると考え、彼の作品を選んだとされています。
各幕で使用されている音楽を一緒に振り返ってみましょう♪
プロローグ
ピアノソナタ第3番ロ短調 作品58からラルゴ(1844年)
この楽章は、静かで感情的なメロディが特徴で、物語の始まりを優雅に導入します。マルグリットの内面的な葛藤や、彼女が抱える運命を暗示する雰囲気が漂います。椿姫の中で要所要所で使用される象徴的なメロディです。
第1幕
ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 作品21(1829年)
紫のパ・ド・ドゥで使用されている曲。軽やかにはじまり、華やかでドラマチックな響き。アルマンとマルグリットとの出会いや、彼らの初めての感情の高まりが色彩を持って生き生きと感じられます。
第2幕
華麗なる円舞曲 作品34からワルツ第1番(1835年)
明るく華やかなこのワルツ。田園優雅での別荘での楽しい雰囲気を醸し出していますね。マルグリットとアルマンの関係の発展を象徴しているよう。二人の愛の高まりが感じられる場面です。
3つのエコセーズ
社交界の楽しい雰囲気を一層盛り上げていきます
華麗なる円舞曲 作品34からワルツ第3番(1838年)
社交界の楽しい雰囲気を一層盛り上げていきます
ピアノソナタ第3番ロ短調 作品58からラルゴ
再び登場するこの楽章は、感情の深さや静けさを表現し、マルグリットの内面の葛藤を強調します。彼女が愛と孤独の間で揺れ動く様子が音楽に表れています。
前奏曲第2番 イ短調
哀愁を帯びたメロディが特徴で、マルグリットの心の痛みや失望感を表現しています。彼女の複雑な感情に寄り添うような音楽です。
前奏曲第17番 変イ長調
アルマンの父親に別れを迫られるシーンの音楽、内心気づいていた自身の迷いにも気づき、混乱と気持ちのたかぶりも感じられます。
前奏曲第15番 変ニ長調(雨だれ)
美しくも繊細なこの曲は、マルグリットの愛に対する強い気持ちと深い悲しみを感じます。彼女の心の変化を反映した音楽です。
前奏曲第24番 ニ短調
緊張感とドラマを持つこの曲は、物語のクライマックスに向けた感情の高まりを強調します。アルマンの絶望感と焦燥感を感じさせる旋律です。
第3幕
ポーランド民謡による大幻想曲イ長調 作品13(1828年)
民謡のリズムを取り入れたこの曲は、感情の高まりと共に、マルグリットのアイデンティティや懐かしさを思い起こすようです。アルマンとの再開の場面で流れる曲です
バラードト短調 作品23(1831-35年)
黒のパ・ド・ドゥの曲。マルグリットの苦悩や愛の悲劇を強調します。特に彼女の最期に向けた感情が表現されているようです。劇的で情熱的なこの曲は、激しく求め合う2人を力強く描写します
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ変ホ長調 作品22(1830-31/1834年)
華やかで繊細なこの曲は、マルグリットとアルマンへの愛の最高潮を描写します。愛ゆえに自らを犠牲にする彼女の深みを象徴する重要な場面で使用されます。
ピアノとオーケストラのための協奏曲ホ短調 作品11から第2楽章ロマンツェ(1830年)
このロマンティックな楽章は、マルグリットの内面的な感情や彼女の愛の深さを表現し、アルマンとの関係の切なさを描写します。
ピアノソナタ第3番ロ短調 作品58からラルゴ
最後に再び登場するこの楽章は、物語の締めくくりとして、マルグリットの最期の思いを反映します。彼女の愛や孤独感が深く表現され、感動的なエンディングを迎えます。
どの楽曲も、バレエ「椿姫」の各場面において、登場人物の感情や物語の展開を深く表現しているよね♪
特にパ・ド・ドゥのシーンは、二人の愛や葛藤が音楽で際立って、胸にグッときたよ。ショパンも最後は結核でなくなってるし、感情がリンクするものもある気がするね。音楽あってのバレエだって、改めて深く感じる作品ね
coyukiっち。椿姫について歴史背景、あらすじ、音楽と見てきたけど、舞台鑑賞楽しめそうかな?
ありがとう!2人のおかげで、ダンサーの表現に、より一層集中して楽しめるようになったと思うよ!これを読んでくださった皆さんで、舞台公演に行く方も楽しんでくださいね^^ 公演の予定ない方は、下に紹介しているDVDや、youtubeでも上がっていたりもするから、是非全幕で世界観を味わってみてくださいね♪
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出演 : パリ・オペラ座バレエ, ジョン・ノイマイヤー(振付),
ミヒャエル・シュミッツドルフ(指揮), パリ・オペラ座管弦楽団
マルグリット(高級娼婦) … アニエス・ルテステュ
アルマン(ブルジョワ青年) … ステファン・ビュヨン
ムッシュ・デュヴァル(アルマンの父) … ミカエル・ドナール
プリュダンス(マルグリットの友人) … ドロテ・ジルベール
マノン(劇中劇「マノン」の女主人公) … デルフィーヌ・ムッサン
デ・グリュー(劇中劇「マノン」の男主人公) … ジョゼ・マルティネズ
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滝澤志野さんの、編曲にあたって、ショパンへ向けた言葉に、そういうベクトルで演奏することもできるんだなってハッとした言葉。滝澤さんの愛が詰まっているなと感じるCDです
ピアノ:滝澤志野(ウィーン国立バレエ専属ピアニスト)
監修・モデル:永橋あゆみ(谷桃子バレエ団プリンシパル)
バレエ椿姫の魅力が少しでも伝わったら幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!