先日舞台袖で、とっても素敵なシルヴィアのパドドゥを撮影させていただきました。ということで、今回は、コンクールや発表会でよくバリエーションが踊られる、バレエ作品「シルヴィア」に触れてみたいと思います
※ちなみに、こちらはバランシン版。コンクールなどでみたことある方は同じバランシン版が多いと思います。バランシン版の動画はこちらをどうぞ:https://youtu.be/Rzt4LkVBtJg?si=8jwpA7FgCnKo9SgI
それではまずは、アシュトン版 ロイアルバレエのダーシーバッセル先生による有名な3幕のバリエーション ピチカート(Pizzicato)をどうぞ!
ひゃー!! この正確かつダイナミックでありながらチャーミングなダーシーバッセルさんの踊り♪これだけでご飯3杯は食べれそうだよw
バレエ作品sylvia3幕のバリエーションだよ。バランシン版がよく踊られるけど、全幕で上演されることは少ない作品だよね。coyukiっちはストーリー知ってるかな?
うーん実は詳しく知らないんだよね。くまぽん先生!今回も教えてください!
よーし!じゃぁ今回は、シルヴィアで最も有名な「フレデリック・アシュトン版」を基に紹介するよ!それじゃぁ、いってみよー!
フレデリック・アシュトン版の特徴
アシュトン版は、オリジナルのロマンティックな雰囲気を尊重しつつも、軽快でユーモアあふれる振付とキャラクター描写が魅力です。また、パ・ド・ドゥ(2人の踊り)や群舞の場面では、アシュトンの振付の繊細さが際立っています。
シルヴィア役は、技術力はもちろん第1幕の力強い狩猟者から、狩人からの逃亡を企む巧妙で機知に富んだ魅惑的な女性、そして最終幕での薔薇のような花嫁まで多層的なキャラクターとして描かれ、表現力を存分に発揮できる作品としても評価されています。
バレエ作品「シルヴィア」あらすじ
あらすじ大枠
舞台は古代ギリシャ ギリシャ神話の人物を題材に、人間と神との愛を描いたロマンティック・バレエです。
狩りの女神ディアナに仕えるニンフ(ギリシア神話における自然界の精)「シルヴィア」と羊飼いの青年「アミンタ」の物語。全3幕構成で、2人の関係の変化を描いています。
登場人物:
シルヴィア
狩りの女神ディアナに仕える美しいニンフ。自由で遊び心あふれる性格。強さと愛を象徴するキャラクター
アミンタ
シルヴィアに恋心を抱く羊飼いの青年。誠実で勇敢なキャラクター
オリオン
邪悪な狩人。シルヴィアを狙っている
エロス
愛を司る神で、シルヴィアに愛の力を教えようとします。物語のキーパーソン。
ディアナ
狩り・貞節を司る月の女神。エンデュミオンという若い羊飼いに恋をし、エンデュミオンが老いて美しさを失わないよう、永遠の眠りにつかせた過去がある。
第1幕:聖なる森(エロスの神殿前)
1幕では物語が一気に進んでいきます。愛を拒絶するシルヴィアが、エロスの矢により変化していく様子が描かれます。個人的には、白塗りのエロスのキャラクターが好きです(笑) 女性キャラクターでは珍しい戦士を思わせる、自由で強いシルヴィアの踊りが見どころ!
舞台は聖なる森。愛の神エロスの神殿前でのニンフたちの礼拝の踊りではじまります。羊飼いの青年アミンタが迷い込み、慌てて逃げるニンフたち。1人になったアミンタはシルヴィアを思い、物思いにふけっています。
そこに登場するのが、狩猟の女神ディアナに仕える乙女たち。彼女たちは弓矢を携え、森で狩猟を楽しんでいます。中心人物であるシルヴィアは、純潔を重んじるディアナの誓いを守り、愛を拒絶し、愛の神エロスを嘲笑します。
アミンタは急いで隠れますが、見つかってしまい、秘めていたシルヴィアへの思いをひたむきに伝えます。シルヴィアは純潔を誓っているため、激怒し、エロスに矢を放ちます。アミンタはエロスを庇い、代わりに矢に傷つき倒れます。
今度はエロスがシルヴィアに矢を射ます。シルヴィアは矢に射抜かれますが、軽傷ですみ、自ら矢を抜きその場を去ります。
苦しみ、遂に命が尽きるアミンタ。神殿前に一人戻ってきたシルヴィアは、アミンタの亡骸を見て悲しみくれます。実はエロスの矢により、シルヴィアの中のアミンタへの愛に気づいたのです。
その一部始終を影からみていた、悪き狩人オリオン。シルヴィアを狙い、何としても自分のものにしようと、力づくでアジトへ連れ去ります。
農民の一人が、連れ去られる様子を物陰から目撃していました。アミンタの亡骸を見て嘆き悲しむ農民たち。そこに怪しいマントの男が現れます。不思議な力でアミンタを甦らせたこの男、実は、変装したエロスでした。シルヴィアが連れ去られたことを知り絶望するアミンタを前に、エロスは正体をあかし、シルヴィアを探しに行くように伝えるのでした。
第2幕:オリオンのアジト 島の洞窟
2幕はシルヴィアがオリオンのアジトに囚われている様子が描かれます。キャラクターダンスや、シルヴィアの魅惑的な踊りが見どころです!
囚われのシルヴィア
オリオンはシルヴィアを洞窟に閉じ込め、宝石や豪華な衣服などの贈り物で彼女を自分のものにしようとします。しかし、シルヴィアは誇り高く、彼に屈しません。シルヴィアはアミンタのことを嘆き悲しみ、エロスの矢を愛おしみます。オリオンがその矢を彼女から奪うと、シルヴィアは悲しみ、オリオンを酔わせて逃げる計画を立てます。彼女はオリオンに酒を勧め、彼を酔わせることに成功します。
エロスの助け
オリオンから矢を取り返し、エロスに助けの祈りを捧げます。彼女の祈りに応えてエロスが現れ、アミンタが生きて彼女を探している様子を投影します。二人は、エロスの用意した船で、アミンタの待つディアナの神殿へ向かい、アミンタとの再会を目指します。
第3幕:ディアナの神殿近くの海岸
3幕はシルヴィアとアミンタの再会。シルヴィアとアミンタの有名なバリエーション、パドドゥがみどころ!
舞台は、ディアナの神殿近くの海岸。
酒神バッカスを讃えるお祭りが行われ、たくさんの人が集まっています。シルヴィアを探しに来たアミンタもそこに到着しますが、シルヴィアは見当たりません。
再会と愛の試練
そこに、エロスがシルヴィアを連れて現れます。お互いに思いを通わせる形で、二人は再会します。喜びも束の間、シルヴィアを追いかけて来たオリオンが現れます。オリオンとアミンタの決闘。シルヴィアはディアナの神殿に身を隠し、オリオンは後を追いかけようとします。
狩りの女神ディアナはこれに怒り、オリオンを打ちのめします。
そして、シルヴィアが愛に陥ったことを非難します。ディアナとって、愛は神聖な誓いを破る行為だからです。
エロスの説得
そんなディアナをみて、エロスはある光景を見せます。それは、彼女が若かりし頃、やはり羊飼いであったエンデュミオンに恋していた時の光景でした。エロスはディアナに、愛の力がいかに偉大で純粋なものであるかを説得し、シルヴィアとアミンタの愛が真実であり、神々さえもそれを認めるべきであることを示します。
ディアナの許しと祝福
ディアナはエロスの説得に心を動かされ、シルヴィアとアミンタの愛を祝福し、2人は幸せに結ばれるのでした。
フレデリック・アシュトン版のストーリーをご紹介したけど、どうだったかな?
1幕〜3幕でのシルヴィアの女性としての変化がすごく見たい!エロスの変装も気になるしw 全幕を見たくなっちゃったよー!
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coyukiっちのように、全幕が観たくなったあなたには、こちらがおすすめ!
「シルヴィア」アシュトン版 英国ロイヤル・バレエ団 バッセル&ボッレ
シルヴィア:ダーシー・バッセル
アミンタ:ロベルト・ボッレ
オリオン:ティアゴ・ソアレス
エロス(愛の神):マーティン・ハーヴェイ
ディアナ(月の女神):マーラ・ガレアッツィ
他 英国ロイヤル・バレエ団
●振付:フレデリック・アシュトン
●音楽:レオ・ドリーブ
※今回の記事を書くにあたって見直したのもこちらです。ダーシーバッセルさん最高!
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シルヴィアの作曲家 レオ・ドリーブ (Léo Delibes) について
バレエ作品「シルヴィア」は、フランスの作曲家レオ・ドリーブによって作曲され、1876年にパリで上演されたんだ。それじゃぁ、今度は音楽が得意な僕が作曲家の紹介をするね♪
バレエ音楽とオペラで評価された作曲家
バレエ作品「シルヴィア」は、フランスの作曲家レオ・ドリーブ(1836年2月21日 – 1891年1月16日)によって作曲されました。レオ・ドリーブは、19世紀フランスの作曲家で、特にバレエ音楽とオペラで知られています。彼の作品は、旋律の美しさ、オーケストレーションの巧みさ、そして物語性を持つ音楽で高く評価されています。バレエ音楽を単なる伴奏音楽以上のものに高め、舞台芸術全体の質を向上させた先駆者とされています。
レオ・ドリーブの3大バレエ
ドリーブは3つの代表的なバレエ作品を残しており、これらは「3大バレエ」として知られています。それぞれの特徴と概要を説明しますね
1. 『ラ・スルス(泉)』 (La Source, 1866年)
- 初演日: 1866年11月12日
- 場所: パリ・オペラ座
- 共同作曲者: レオン・ミンクス(最初の3幕を担当)
- 振付: アルチュール・サン=レオン
- あらすじ:
東洋的な雰囲気を持つこの物語は、水の妖精ナイラと若い狩人ジェミルの冒険を描いています。物語の中で、ナイラは愛する人の幸せのために犠牲を払います。 - 特徴:
『ラ・スルス』は、異国情緒あふれる音楽と幻想的な物語が特徴です。この作品は、ドリーブの才能を広く知らしめ、後に彼が『コッペリア』を手掛けるきっかけとなりました。
2. 『コッペリア』 (Coppélia, 1870年)
- 初演日: 1870年5月25日
- 場所: パリ・オペラ座
- 原作: E.T.A.ホフマンの短編小説『砂男』
- 振付: アルチュール・サン=レオン
- あらすじ:
小さな村に住む恋人同士、スワニルダとフランツを中心にしたコミカルな物語。人形職人コッペリウスが作った人形「コッペリア」をフランツが本物の女性だと思い恋心を抱くところから物語が展開します。嫉妬したスワニルダが人形に成りすまして事件を解決し、最終的に二人は結ばれます。 - 特徴:
『コッペリア』は、明るくユーモラスな物語とドリーブの軽快な音楽が融合した作品です。特に「マズルカ」や「ワルツ」などの舞踊音楽が非常に有名です。
3. 『シルヴィア』 (Sylvia, 1876年)
- 初演日: 1876年6月14日
- 場所: パリ・オペラ座
- 原作: トルクァート・タッソの詩『アミンタ』
- 振付: ルイ・メラント
- あらすじ:
ギリシャ神話に基づく物語で、狩猟の乙女シルヴィアと羊飼いアミンタの恋愛を描いています。邪悪な狩人オリオンや愛の神エロスの介入を通して、シルヴィアは真実の愛に目覚め、最終的にアミンタと結ばれます。 - 特徴:
『シルヴィア』は、ドリーブのオーケストレーションの美しさが際立つ作品です。特に序曲や「ピッツィカート」の音楽は有名で、透明感のある優美な響きが特徴です。
ドリーブのバレエ作品は、音楽がドラマを補うだけでなく、舞台全体の雰囲気や感情を高める役割をしているよね♪『コッペリア』や『シルヴィア』は150年経った今もバレエ団の主要レパートリーに含まれ、世界中で上演されているなんて、本当にすごいよ!
それじゃぁ今度は振り付けが得意なワタクシが振り付け家によるバージョンの違いをまとめてみたニャオ。解釈が違えば、表現も世界観も全然違うから、機会があったら是非とも観てみてニャー
振付家による代表的なバージョンのご紹介
『シルヴィア』は、1876年の初演以来、複数の振付家によって再構築や再解釈が行われてきました。それぞれの振付家が作品に個性を加え、時代や文化的背景に合わせてアプローチを変えています。今回は、代表的な振付家とその特徴についてまとめてみました
年代 | 振付家 | 特徴 | 初演キャスト | 初演劇場 |
---|---|---|---|---|
1876年6月14日 | ルイ・メラント (Louis Mérante) | 古典的なロマンティック・バレエのスタイル。当時のフランス・バレエの伝統を反映し、物語の叙事的要素を表現する振付が中心で、観客にギリシャ神話の世界を感じさせる演出。 | リタ・サンガッリ (Rita Sangalli) | パリ・オペラ座 |
1901年 | アレクサンドル・ゴルスキー (Alexander Gorsky) | ロシア的な演出と振付の再解釈。メラント版を基にしつつ、ロシアの観客向けに再構成。 ゴルスキーの革新的な振付スタイルが取り入れられた。 | ボリショイ劇場 | |
1952年9月3日初演 | フレデリック・アシュトン (Frederick Ashton) | 音楽性と叙情性を重視した振付。ドリーブの音楽の美しさを引き立てる振付を創作。 このバージョンは高く評価され、現在でも多くのバレエ団で上演されている。 | マルゴ・フォンテイン (Margot Fonteyn) / マイケル・ソームズ (Michael Somes) | ロイヤル・オペラ・ ハウス |
2004年 | ジョン・ノイマイヤー (John Neumeier) | 心理的テーマを深掘りした現代的解釈。ノイマイヤー版は、単なる神話的な物語としてではなく、キャラクターの心理的な深みを探る作品として再解釈されている。 | ハンブルク・バレエ団 | |
2009年 | デヴィッド・ビントレー (David Bintley) | 物語性と視覚的な美しさを重視。ビントレーは物語性を重視し、視覚的にも華やかな演出を施した。 彼のバージョンは新国立劇場バレエ団でも上演されている。 | バーミンガム・ロイヤル・バレエ |
バレエ作品シルヴィアについて詳しく紹介してみたけど、coyukiっち、この作品が好きになったかな?
もっちろん!くまぽん、あおちゃん、ニャオきち。みんなありがとう!最後まで読んでくれた皆さんも、ありがとうございました!お礼に、動画をいくつか載せておきますね♪シルヴィアの音楽もあるので、是非そちらも覗いて雰囲気を味わってみてください♪ それじゃぁ、まったねー!
おまけ:sylviaの動画ご紹介
ダーシー・バッセルとマリアネラ・ヌニェスの対談
Sylvia 1幕の一部ご紹介 Darcey Bussell – Royal Ballet
Sylvia音楽
音楽ミックスリスト
ミックスリストはこちらから:https://youtu.be/I0CDhcFPb6k?si=0XBO3o4vib7zofBR
全幕バレエを自宅でゆっくり見るなら、こちら
「シルヴィア」アシュトン版 英国ロイヤル・バレエ団 バッセル&ボッレ
シルヴィア:ダーシー・バッセル
アミンタ:ロベルト・ボッレ
オリオン:ティアゴ・ソアレス
エロス(愛の神):マーティン・ハーヴェイ
ディアナ(月の女神):マーラ・ガレアッツィ
他 英国ロイヤル・バレエ団
●振付:フレデリック・アシュトン
●音楽:レオ・ドリーブ
※今回の記事を書くにあたって見直したのもこちらです。ダーシーバッセルさん最高!
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